都市の未来を、どうブランドにするか。|北九州市「Kitakyushu Action!」の都市ブランディング
事例
City Branding Case / Kitakyushu Action!
自治体の都市ブランディング事例|北九州市「Kitakyushu Action!」のビジョン・ロゴ・広報設計を手がけたハイライツ
自治体のブランディングというと、ロゴやキャッチコピー、観光プロモーションなどを思い浮かべるかもしれません。けれど、私たちはそれだけが都市ブランディングではないと考えています。この街は、どんな未来を目指すのか。それを、どんな言葉で伝えるのか。行政、市民、企業が共有できる旗印をどうつくるのか。そして、つくったブランドをどう使い続け、人の行動につなげていくのか。2020年から、北九州市のクリエイティブディレクターとして、広報の改善から都市のビジョン、コピーライティング、ロゴ・VI、キービジュアル、イベントなど、さまざまな取り組みに関わってきました。今回は「Kitakyushu Action!」を通して、自治体のブランドを「つくる」だけでなく「動かしていく」ために、何を考え、何に取り組んできたのかをご紹介します。
この記事の要点
- ・都市ブランディングは、ロゴやコピーをつくることではない。街がどんな未来を目指すのかという、共通の判断軸をつくること。
- ・「Kitakyushu Action!」は、行政・市民・企業が共有できる旗印。ブランドコンセプトは「行動が、未来を動かす。」
- ・ブランドは、つくって終わりではない。判断に使われ、行動につながることで、少しずつ街の文化になっていく。
この記事が役立つ人
- ・総合計画や都市ビジョンを、市民に伝わる言葉にしたい自治体の企画・広報担当
- ・市制周年などを機に、都市ブランドを見直したい方
- ・シティプロモーションや広報物に一貫性を持たせたい方
そうでない人
- ・ロゴやキャッチコピーを単体で、安く早くつくりたいだけの方
highlights inc.(ハイライツ株式会社)/ Client:北九州市

はじまりは、広報を変えることから
2020年、ハイライツ代表の下川大助が北九州市のクリエイティブディレクターに就任しました。当時の課題のひとつが、20〜30代の若者や子育て世代の人口流出でした。
実際に街を歩くと、外から抱いていたイメージとは違いました。都市としての利便性がありながら自然も近く、食文化や独自の歴史があり、福岡市へも新幹線で約15分。魅力がないのではなく、街が持つ価値と外から見られているイメージとの間にギャップがある。その価値をどう整理し、伝えるかが課題でした。
最初からロゴをつくったわけではありません。地方創生施策の戦略的広報、市役所内の広報への助言、職員の広報力を高める取り組みなど、日々のコミュニケーション改善から始めました。目の前の広報と、その先にある都市のブランド。その両方を行き来しながら取り組みを続けてきました。
自治体の「伝える」を、ひとつのブランドとして考える
新しい都市ビジョンをどう市民に伝えるのか。目指す姿をどんなコピーやロゴで表現するのか。部署ごとに生まれる広報物にどう一貫性を持たせるのか。地域の魅力をシティプロモーションとしてどう発信するのか。そして、つくったブランドを市民や企業の行動へどう広げるのか。
これらを別々の制作物としてではなく、ひとつの都市ブランドとして捉える。北九州市でも、広報の改善から都市像の整理、言葉、ロゴ・VI、ビジュアル、市民が参加する場へと取り組みを広げてきました。
ロゴから始めない。判断から始める。
都市には行政、市民、企業、学校、クリエイターなど多くの人が関わります。だからこそ表現を揃える以前に、「私たちは、どんな未来を目指すのか」という共通の判断軸が必要です。
誰が決めるのか。何を目指すのか。何をつくる必要があるのか。どの順番で進めるのか。
都市像があり、それを伝える言葉があり、そこからロゴやビジュアルが生まれる。ブランディングは、ロゴから始めるのではなく、判断から始める。北九州市との取り組みで大切にしてきた考え方です。

「Kitakyushu Action!」という、街を動かす旗印
2024年4月、北九州市は新たなビジョンのもと「Kitakyushu Action!」を掲げました。「Action!」には、未来を誰かに任せるのではなく、一人ひとりが自ら動き出す街にしていこう、という意思があります。
私たちはこれを単なるスローガンではなく、都市の判断を揃えるための旗印として考えました。「これはAction!に沿っているだろうか」「この取り組みは、目指す都市像につながっているだろうか」。街に関わる人が自分たちの行動を考えるための共通言語です。
北九州市公式でもブランドコンセプトを「行動が、未来を動かす。」とし、市民とともに未来を動かす意思を示しています。


ビジョンを、言葉とデザインにする
都市のビジョンは行政文書の中にあるだけでは、市民には届きにくいものです。「Kitakyushu Action!」という言葉、ロゴ、キービジュアル、さまざまな広報物。言葉とデザインには、複雑なビジョンを直感的に理解できる形へ変換する力があります。
大切なのは、その前にある都市像と、表現された言葉やデザイン、実際の施策が一貫していること。都市ビジョン、コピーライティング、ロゴ・VI、広報、シティプロモーションを別々に考えず、一つの思想からつなげていくことが、都市ブランドに一貫性を生みます。
行政から市民へ。ブランドを「自分事」にする
都市ブランドは、行政だけが使っていても街のブランドにはなりません。食、ビジネス、アート、ファッション、教育、サステナビリティなど、街の各所で生まれていた挑戦を「Kitakyushu Action!」という共通の視点から捉え直すことで、別々の活動が一つの街の動きとして見えてきます。
2024年には、市役所と民間チームが主体となり、15〜29歳の若者と、新ビジョンで目指す都市像や自分自身のActionを考える「若者と未来を描くワークショップ」も開催されました。ブランドを行政から一方的に発信するのではなく、街に関わる人たちが自分自身のActionを考える。こうした取り組みも、「Kitakyushu Action!」を街のものにしていく一歩だと考えています。

「Action!」が、本当に街で動いているか
2026年2月、小倉駅JAM広場で「Action! Fes」を開催しました。食、アート、ファッション、教育、ビジネスなど、北九州で生まれているさまざまなActionが一つの場所に集まりました。
目的は単にイベントを開催することではありません。「Kitakyushu Action!」という言葉が本当に街の中で使われ、行動につながっているのか。それを公共空間で可視化することでした。小さなActionが次のActionを生む。その循環をつくり続けることも都市ブランディングのひとつです。


街の記憶を、未来につなぐ
「Kitakyushu Action!」の世界観は、キービジュアルやキャラクターへも広がっています。その背景にあるのが、かつて北九州市にあったスペースワールドです。
スペースワールドが開業したのは1990年。東京ディズニーシーも、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンも、まだ存在していない時代です。そんな時代に北九州で、宇宙をテーマにした大型テーマパークをつくり、ラッキーやヴィッキーといったオリジナルキャラクターまで生み出した。今振り返ると、これはかなり大きな挑戦だったと思います。まだ誰もやっていないことに挑戦し、自分たちの手で新しい体験や文化をつくろうとした。スペースワールドは、北九州の人たちにとって楽しかった場所であるだけでなく、そんな「挑戦する街」の記憶でもあるのではないかと思います。
だから今回考えたのは、懐かしいものをそのまま復活させることではありません。スペースワールドが持っていた挑戦の精神を、今の北九州にどう受け継ぐか。過去を再現するのではなく、その街が持つ記憶や誇りを読み解き、次のActionにつなげていく。「Kitakyushu Action!」のキービジュアルや新しいキャラクターも、その考え方の延長にあります。
キャラクターの名前を市民から募集するなど、完成したものを一方的に届けるのではなく、街の人たちと一緒に育てていく。過去の挑戦を、次の挑戦へ。これも、北九州の都市ブランディングで大切にしていることのひとつです。

数字にも表れ始めた、街の変化
2024年、北九州市の社会動態はプラス492人となり、60年ぶりの転入超過を達成しました。また「住み続けたいと思う」市民の割合は84.1%と過去最高になっています。
もちろん、こうした変化がブランディングだけによって生まれたわけではありません。行政、企業、市民、教育機関など、多くの人たちの挑戦の結果です。ただ、その一つひとつの動きをつなぎ、同じ未来へ向かう共通言語をつくり、街の変化を見える形にして次の行動へつなげる。そこには都市ブランディングが果たせる役割があります。

自治体のブランドは、つくって終わりではない
2020年に北九州市との取り組みが始まってから、約6年。広報の改善から始まり、都市像を考え、言葉をつくり、ロゴやビジュアルをつくり、それを街の中で使い、市民のActionへとつなげてきました。
ブランドは、使われることで意味を持ちます。判断に使われる。広報に使われる。行動につながる。街の中で語られる。新しい挑戦が生まれる。それが積み重なることで、少しずつ街の文化になっていく。
「Kitakyushu Action!」も、まだ完成したわけではありません。ここからまた、次のActionへ。私たちも北九州市の皆さんと一緒に、このブランドを育てていきたいと思っています。
自治体・地域のブランディングについて
ハイライツでは、自治体や地域が目指す未来の整理から、都市ビジョンの言語化、コピーライティング、ロゴ・VI、ブランドガイドライン、Web・広報物、シティプロモーション、イベントなど、戦略からクリエイティブ、運用まで一貫して支援しています。
- ・新しい総合計画や都市ビジョンを、市民に伝わる言葉にしたい
- ・自治体のビジョンを表すコピーやロゴをつくりたい
- ・市制周年などを機に、都市ブランドを見直したい
- ・シティプロモーションを強化したい
- ・自治体の広報やデザインに一貫性を持たせたい
- ・地域の魅力を整理し、移住・定住や関係人口につながる発信を考えたい
- ・つくったブランドを、市民や企業の参加へつなげたい
ロゴやWebなど「何をつくるか」がまだ決まっていない段階でも構いません。何を目指し、そのために何が必要なのか。そこから一緒に考えることが、ハイライツのブランディングです。
都市のブランド、ロゴから考えていませんか
「新しいビジョンをどう市民に伝えればいいか分からない」「広報物が部署ごとにばらばら」——その段階からで大丈夫です。何を目指し、何が必要なのかの整理から、一緒に始めます。
あわせて読む:北九州市 Kitakyushu Action! プロジェクト/ブランディングの進め方/ブランディング会社の選び方 完全ガイド/新規事業ブランディングの事例(tetoru)
ブランディング会社「ハイライツ」について
ハイライツ株式会社(highlights inc.)は、東京・表参道と福岡を拠点に、企業・事業・サービス・地域のブランディングを手がけるデザイン会社です。ブランド戦略やコンセプト設計から、コピーライティング、ネーミング、ロゴ・VI、Web、グラフィック、空間、映像、ブランドガイドラインまで、戦略とクリエイティブを一貫して支援しています。
自治体・地域のブランディングでは、都市ビジョンの言語化、コピーやロゴの開発、広報デザイン、シティプロモーション、市民参加施策、ブランド運用まで、構想段階からご相談いただけます。
よくある質問
Q 自治体のロゴ制作だけでも相談できますか?
はい。ロゴ制作からのご相談も可能です。ただし、ロゴが何を表すべきかを整理するため、都市ビジョンや施策の背景、地域の課題などを確認したうえで進めることを大切にしています。
Q 総合計画や都市ビジョンのコピーライティングから相談できますか?
はい。行政文書として整理されたビジョンを、市民や企業にも伝わる言葉へ翻訳するコンセプト設計、ステートメント、タグライン、コピーライティングなどから支援できます。
Q シティプロモーションや自治体広報も対応できますか?
はい。ブランド戦略を起点に、Web、SNS、広報物、広告、イベントなど、地域の魅力や施策を継続的に発信するコミュニケーションまで対応しています。
Q 市制周年などをきっかけに自治体ブランドを見直す相談もできますか?
はい。周年事業を単発のロゴやキャンペーンで終わらせず、その後も使い続けられるブランドの考え方や仕組みから設計することが可能です。
Q ブランド策定後の運用も相談できますか?
はい。ブランドガイドラインの整備、広報物の監修、各施策への展開、市民参加型の企画など、策定後のブランド運用も継続して支援しています。
Project Credits
Client:北九州市
Project:Kitakyushu Action!/北九州市 都市ブランディング
Creative Direction:下川大助(ハイライツ株式会社)
Branding / Art Direction / Design:ハイライツ株式会社
▶ プロジェクトの詳細:北九州市 Kitakyushu Action! 事例ページ
下川大助(しもかわ だいすけ)
ハイライツ株式会社 代表取締役/クリエイティブディレクター。企業やサービスのブランディング、CI・VI、Web、コミュニケーションデザインなどを手がける。2020年より北九州市クリエイティブディレクターとして、戦略的広報から都市ブランディングまで継続して携わる。著書に『ブランディングデザイン』(MdN)。
公開日:2026年8月11日 / 最終更新日:2026年8月11日
出典:「Kitakyushu Action!」のロゴ・ブランドコンセプトおよび都市ビジョンは、北九州市公式サイト「Kitakyushu Action!」および同 ロゴ・ブランドコンセプトに基づく。「若者と未来を描くワークショップ」は北九州市の発表を参照。2024年の社会動態プラス492人・60年ぶりの転入超過、および「住み続けたいと思う」市民の割合84.1%(過去最高)は、北九州市「ふっかつの北九州市!60年ぶりの人口転入超過!」に基づく。キービジュアル・新キャラクターは北九州市のプレスリリースを参照。「Action! Fes」の内容は下川大助のnoteを参照。各URLの参照日:2026年8月11日。プロジェクトの詳細は 北九州市 Kitakyushu Action! 事例ページ も参照。
highlights inc.(ハイライツ株式会社)|2010年設立、東京・表参道のブランディング専門デザイン会社。コンセプト策定から表現・定着まで一貫して手がけます。Cannes Lions、ニューヨークADC、グッドデザイン賞ほか受賞多数。