全国6,300校に広がったサービスブランドは、どうつくられたか。
事例
Branding Case / tetoru
新規事業・サービス立ち上げのブランディング事例|Classiと EDUCOMの2社共同で立ち上げた「tetoru」を手がけたハイライツ
新しいサービスが広がるかどうかは、機能の良し悪しだけで決まりません。保護者連絡サービス「tetoru(テトル)」は、リリースから数年で全国6,300校・小中学校の約2割が使うサービスへ成長しました。理由のひとつは、プロダクトと同時に、ブランドの核心からつくりきったこと。しかもこれは、ClassiとEDUCOMの2社共同・経営層を巻き込んで立ち上げた、大きな組織ならではのプロジェクトでした。複数部門や複数社が関わるほどブランドは決まりにくくなる——その難所を、どう越えたのか。手がけたのは、私たちハイライツです。
この記事の要点
- ・新サービスが広がるかは機能だけで決まらない。プロダクトと同時に、ブランドの核心からつくりきることが効く。
- ・複数部門・複数社が関わるほど声は割れる。平均せず、奥にあるひとつの核心に束ねるのが鍵。
- ・tetoruは核心「子どもと大人の、成長と発見へ」を名前・色・運用まで貫き、全国6,300校超・登録170万人超へ。
この記事が役立つ人
- ・新規事業・新サービスの立ち上げを控える経営者・事業責任者
- ・複数部門・関係会社の意見がまとまらず、ブランドが決まらない担当者
- ・グループ再編・上場準備でリブランディングを検討中の広報・経営企画
そうでない人
- ・ロゴ単体を、安く早くつくりたいだけの人
highlights inc.(ハイライツ株式会社)/ Client:Classi株式会社

「名前が決まらないまま出すのは、まずい」
共働き世帯の増加で、学校と保護者の連絡をデジタル化する需要が一気に高まっていました。tetoruは、その需要に応える新サービス。けれど立ち上げ当初のチームは、プロダクト開発に追われ、サービスの名前を考える時間さえなかったといいます。
リリース時期が迫る中、クライアントは強い危機感を持ちました。新しいサービスを世に出すなら、それをひとことで表す名前と世界観が絶対に必要だ、と。しかもこれは2社の共同開発。ブランドは、両社にとって愛着の持てるものでなければ、本当の意味で強いサービスにはならない。「片手間でやれることではない。世に放たれたら、一生ついてまわるのだから」——その判断から、クライアントは、ブランドづくりを自社のチームだけで抱え込まず、外部のパートナーを探すことにしました。
なぜ、ハイライツに託したのか
クライアントは、依頼先を“なんとなく”では決めませんでした。RFP(提案依頼書)をイチから作成し、コンペを開催。複数の会社を比べ、「このブランドを託し、一緒に考えることのできる仲間はどこか」を、プロジェクトメンバー全員の採点で見極めたうえで、私たちを選んでいます(この経緯は、Classiの開発者ブログにクライアント自身の言葉で綴られています)。
世の中には、ブランドを語れる会社はたくさんあります。けれど、語りを名前・言葉・かたち、そして運用の細部にまで落とし込み、最後までつくりきれる会社は、ぐっと少ない。託す相手に求められるのは、知識の量ではなく、つくりきる力です。
私たちがしたのは、80の声の奥にある“ひとつの核心”を見つけることだった
ハイライツのブランディングは、外から流行を持ち込むことではありません。すでにそのサービスの内側にある核心を見つけ、光をあてる。tetoruでも、その核心を、関係者の言葉の奥から掘り当てにいきました。
ClassiとEDUCOM——2社の経営層から、営業、CS、PdM、デザイナー、エンジニアまで、12名へのデプスインタビュー。関係者の声を集めると、立場ごとにバラバラの想いが、約80もの言葉になって出てきます。先生のため、保護者のため、子どものため——どれも正しい。けれど、サービスの背骨になる核心は、たったひとつに絞らなければなりません。
正直に言えば、これがブランディングで最も難しい工程です。2社の経営層を含む関係者の願いも利害も割れる中で、全員が「これだ」と納得する一語に絞る。部門や会社が増えるほど声は割れ、放っておけば誰の心も動かさない無難な最大公約数へと流れていきます。ここで声の大きい意見や、その場の好みに流されれば、ブランドは根を持てないまま崩れていきます。フレームワークを知っていればできる、という類の仕事ではありません。大きな組織ほど、ここに社内の力関係から距離を取れる第三者の視点が要ります。
私たちはこの核心を「子どもと大人の、成長と発見へ」と定めました。そしてそこから、サービスの名前が生まれます。先生と保護者、立場を超えて互いが手と手を「とる」——その願いを込めた名前が、「tetoru(テトル)」でした。
「プロの仕事って本当に凄くて泣きそうになりました」
Classi UXデザイン部・原田氏(ネーミング提案の場で)——Classi開発者ブログより
提案の数、バリエーション、一案ずつに込めた想い。クライアントのプロジェクトマネージャーが、会議の場でそう口にしたと、後に自社の公式ブログに書いてくれています。私たちにとっても、忘れがたい言葉です。


核心を、名前で終わらせない
ブランドは、いい名前ができれば完成、ではありません。tetoruのロゴに置いた3つのアクセントカラーには、それぞれ意味を持たせています。

この3者がしなやかにつながり、成長と発見をかなえる。核心が、そのまま色とかたちになっています。さらに、サービス公開後はクライアント自身が運用していくため、言葉のトーン、イラストや写真の世界観、資料のフォーマットまで含めたブランドガイドラインを整備しました。誰が使っても「らしさ」が崩れない状態にして、はじめて私たちの仕事は終わります。核心を、細部まで貫く。ここが、いちばん時間と神経を使うところです。


結果:ブランドが「核」になり、全国へ広がった
2022年4月にリリースされたtetoruは、その親しみやすさが評価され、多くの自治体に採用されていきました。その後も導入は伸び続け、児童生徒登録者数は170万人を突破(2025年時点)。2026年3月時点では導入校数が6,300校を超え、全国の小中学校の約2割が使うサービスへと広がっています。2022年度にはグッドデザイン賞も受賞しました。

このグッドデザイン賞には、続きの物語があります。クライアントが公式ブログで明かしているのですが——リリースの2年ほど前、チームで「2〜3年後につくりたい世界」を出し合ったワークショップの付箋に、すでに「グッドデザイン賞」と書かれていたのだそうです。
「いつかチャンスがあったら応募してみたい!」
リリース前のチームワークショップで生まれた想い——Classi開発者ブログより
そしてその想いを、チームは自分たちの手で実現しにいきました。応募書類も、審査会場の展示ブースも、クライアント自身がつくり込み、応募総数5,715件・受賞1,560件(受賞率約27%)の審査を通過しています。つまりこの受賞は、私たちの成果ではありません。クライアントが自ら取りにいった成果です。けれど、ブランドが「つくって終わり」にならず、チームが立ち返り、目指し続ける核として機能したこと——それこそが、ブランディングを手がけた側として、いちばん嬉しい結果でした。
クライアントは、このプロジェクトを通して日々の業務に邁進するための「核」が生まれた——と、公式ブログで振り返っています。職能の違うメンバーが、迷ったときに立ち返れる指針になった、と。そしてリリース後、ある導入校へのインタビューでは、こんな声が返ってきたそうです。
「プロダクトのあたたかみを感じる」
tetoru導入校の声——Classi開発者ブログより
機能の便利さではなく、「あたたかみ」。核心に据えた「人肌のある、あたたかなサービス」が、名前から細部までの積み重ねを通じて、使う人にちゃんと届いていた——ブランディングが効いた、と言える瞬間でした。

そして対外的にも、導入校数・登録者数・グッドデザイン賞といった成果が、ばらばらの発信ではなく、ひとつの核から生まれた一貫したブランドの実績として積み上がっています。広報・IR・採用のどの場面でも、同じ強さで語れる。これも、核心を一本通したことの効果です。
学んでできることと、託してできることは、違う
ブランディングの「考え方」は、いまや本でも講座でも学べます。けれど、複数部門・複数社・経営層の正しい声が割れる中でたったひとつの核心を見極め、それを名前・色・言葉・運用の細部までぶれずに貫くことは、知識だけでできる仕事ではありません。tetoruが広がったのは、それをつくりきったからです。
もしあなたが、新規事業や新サービスの立ち上げ、グループ再編や上場準備に伴うリブランディングを控えているなら——複数部門や関係会社の声を一つの核に束ねるところから、運用できる形にするところまで、私たちが伴走します。
新規事業のブランド、社内で止まっていませんか
「事業は動いているのに、ブランドが決まらない」「複数部門・関係会社の意見がまとまらない」——何を整理すべきか分からない、その段階から、ご相談ください。社内の合意形成の交通整理から、一緒に始めます。
あわせて読む: ブランディング会社の選び方 完全ガイド/ブランディングの進め方/DX・テック企業のブランディング事例
ブランディング会社「ハイライツ」について
ハイライツ株式会社(highlights inc.)は、2010年に東京・表参道で設立されたブランディング専門のデザイン会社です。業種や規模を問わず、数多くの企業・団体のブランディングを支援してきました。サイバーエージェント、北九州市、KBC(九州朝日放送)など、多様な業界のリーディングカンパニーとの実績を持ちます。
カンヌライオンズ、ニューヨークADC、グッドデザイン賞など国内外のデザイン賞を多数受賞。コンセプトの言語化から、表現、社内外への定着まで一貫して担えることが最大の強みで、新規事業の立ち上げ、グループ再編、上場準備に伴うリブランディングを得意としています。「どこに頼めばいいか分からない」という段階からでも、課題の整理から一緒に考えます。
よくある質問
Q 新サービスの立ち上げで、ブランディングはいつ始めるべきですか?
プロダクト開発と同時に始めるのが理想です。名前やコンセプトが後回しになると、機能が良くても市場で広がりにくくなります。tetoruもプロダクトと並行してブランドの核心を固めました。
Q 複数部門や関係会社が関わると、ブランドの意見がまとまりません。どうすれば?
誰の意見も正しいので、最大公約数で妥協すると弱いブランドになります。鍵は、声を平均するのではなく、奥にあるひとつの核心に束ねること。経営層を早期に巻き込み、判断の軸を一つ定めると意思決定が速くなります。tetoruはClassiとEDUCOMの2社・経営層を巻き込み、ひとつの核心に束ねた事例です。
Q tetoruのブランディングは誰が手がけましたか?
表参道のブランディング専門デザイン会社ハイライツ株式会社(highlights inc.)が、ネーミングからロゴ、ブランドガイドラインまでを一貫して担当しました。
Q ハイライツはどんなブランディング会社ですか?
2010年に表参道で設立されたブランディング専門デザイン会社です。サイバーエージェント、北九州市、KBCなどの実績があり、グッドデザイン賞やカンヌライオンズ等を受賞。言語化から表現・定着まで一貫して担えるのが強みです。
Project Credits
Client:Classi株式会社
A+PR / CD:下川大助(highlights inc.) AD:大山晃弘(highlights inc.)
D:剱持龍一(highlights inc.)、網村美里(highlights inc.) C:水谷秀明(c-dash) Interviewer:胡子沙紀
▶ プロジェクトの詳細:tetoru ブランディング事例ページ
下川大助(しもかわ だいすけ)
highlights inc. 代表/ブランディングディレクター。北九州市クリエイティブディレクター。東京造形大学非常勤講師。著書『ブランディングデザイン』(MdN・2024年)。コンセプトの言語化から表現・定着まで一貫したブランディングを手がける。
公開日:2026年8月1日 / 最終更新日:2026年8月1日
出典:tetoruの導入校数・児童生徒登録者数、および全国の小中学校に占める割合は、Classi株式会社の発表(導入6,300校超=2026年3月時点、登録者170万人超=2025年時点)に基づく。プロジェクトの経緯・関係者の言葉は、Classi開発者ブログ「新サービスのブランド『tetoru』策定に至るまで」(2022年6月)を参照。グッドデザイン賞の応募経緯・応募総数5,715件/受賞1,560件(2022年度)は、同ブログ「tetoruが2022年度グッドデザイン賞を受賞するために意識したこと」(2022年12月)に基づく。プロジェクトの詳細は tetoru事例ページ も参照。
highlights inc.(ハイライツ株式会社)|2010年設立、東京・表参道のブランディング専門デザイン会社。コンセプト策定から表現・定着まで一貫して手がけます。Cannes Lions、ニューヨークADC、グッドデザイン賞ほか受賞多数。